診療実績

要旨

 これまでを振り返りますと、昭和45年開業時の消化器内科の検査は、主にX線検査、内視鏡検査(胃カメラ)でした。その後時代の変遷と共にX線検査はテレビX線に変わり、内視鏡検査は胃カメラから胃ファイバースコープを経て現在は電子内視鏡検査時代へと大きく進歩しました。このような変化の中で扱って来た患者総数は表1(年間検査数の推移)に示す通り、内視鏡検査数は上部、下部合わせて述べ合計118,428人、X線検査は胃、大腸合わせて述べ合計65,550人となります。この中で胃内視鏡検査の一番多い年は平成5年の上部内視鏡検査数5,201人、平成19年の下部内視鏡検査数(全大腸)513人、また、X線検査は昭和54年の胃X線検査数4,299人、昭和59年の注腸大腸X線検査数104人となっております。

 あくまで医師一人での検査数であり、大学時代(医局)、勤務医時代をあわせますとかなりの数となりますが、ここではあくまで開業以来の数に限って取り上げました。

 これで見られることは、最近検査数は上部内視鏡検査は数において最も多い時期の約半数となりますが、下部内視鏡検査では時代の要求に答える形で増加してきており、またX線検査は胃、大腸共に次第に減少しているのが当院の実情であります。

 次に表2(年間がん登録者数推移)に示す通り、宮城県新生物レジストリー調査に従って登録した患者数は総数1,785人となり、昭和45年と平成19年は含まれないので実際の期間は35年間となります。その内訳は食道がん、胃がん、大腸がん及びそれ以外のがんに分けて表示してありますが、年間51人になり、月平均に直しますと4.25人になります。この中で食道がんが多かった年は平成11年、平成17年の7人であり、胃がんにおいては平成8年の40人、大腸がんの平成10年の29人となっております。その他のがんの合計で多い年は平成元年の14人となっております。 年間の発見がん患者総数で一番多い年は平成10年の77人となっております。

 このことは、消化器内科の関係上、胃、大腸、食道がんが多くを占めており、その他のがんの内訳は表3(その他のがん内訳)の通りであります。

 この表でみるかぎり、胃、大腸、食道がんについで多いのは膵がんの61人、男女比38:23、次に肝がんの43人、男女比27:16、肺がん34人、男女比30:4となり、膵がん肝がんにおいては明らかに男性に多く、また肺がんにおいてはかなり高い比率で男性に多く発見されております。

 なお、調査様式が平成8年から大幅に改正されたのを機に平成18年までの11年間の早期がん比率を集団検診(職場検診含む)群と自覚症状を有する群に分け、食道、胃、大腸別にみますと表4(早期がん発見数)の通りになります。

 食道がんの場合には自覚症状を有する群6人に対して、集団検診(職場検診含む)群の3人となり有自覚症状群が多く、また胃がんの場合は自覚症状を有する群86人に対して集団検診(職場検診含む)群の61人となり有自覚症状群の方が集団検診(職場検診含む)群より多く発見されております。然し近年は次第に集団検診(職場検診含む)群が多くなってきている印象をもっております。

 次に大腸がんにおいては自覚症状を有する群46人に対して集団検診(職場検診含む)群49人で、検診例の方が若干多くみられました。

 このことは便潜血検査を通じて二次検診(精密検査)を受ける例が増えてきている関係と思われます。

 なお、平成8年から平成18年までの11年間で、食道、胃、大腸がんの早期がんと進行がんとの割合は、食道がんにおいては9:52で17.3%、胃がんにおいては147:325で45.2%、大腸がんでは95:219で43.3%の割合で早期がんが発見されており、おおよそ食道がんの2割弱、胃がん、大腸がんの5割弱の割合になっております。

 また食道、胃、大腸がんの合計の早期がん、進行がんの割り合いは、表4’(早期がんと進行がんの割り合い)の通りで42.1%となっており、近年、早期がんの発見率が向上してきている点は十分と云えないまでも、昭和61年に医療法人化で掲げた早期がん発見目標に努めてきた成果とも思われます。

 次に対がん協会の集団検診から発見した胃・大腸がんと当院で発見した同がん(登録がん含む)を対比してみると、表5(集団検診発見数との対比)の通りになります。この表は集検地域として対がん協会の場合は気仙沼市(旧唐桑町含む)、本吉町、南三陸町(志津川町、歌津町)の住民が集団検診を受けて二次検診に廻って発見されたがんの数であり、当院の場合では対がん協会の範囲の外に岩手県旧室根村、千厩町の一部を含めてあります。これらの人のなかから一次検診を経て二次検診に廻るわけですが、この場合二次検診(精密検診)は当管内では随時個人が希望する医療機関で受診することが可能で、そこで発見されたがんの数としてすべてが登録されております。これが表5の内訳であります。従って対がん協会の数はすべて集団検診を受けた人の中から発見された数であり、当院の場合には集検の二次検診と自覚症状をもって受診する例から発見されたがんであり、数のうえではむしろこちらの方が多いように思われます。これが全て対がん協会登録事業即ち宮城県新生物レジストリー調査に登録した数と云うことになります。当然このまま比較は出来ませんが、これから次のことが云えると思われます。

 それは、対がん協会の集検発見数353人に対して当院では188人となり対がん協会の53%に当たっております。このことは集団検診を受けた二次検診からの発見数が多いことを物語っております。

 また大腸がんにおいては対がん協会の346人に対して当院の77人、22%に当たっており、当院の場合には大腸検診の二次検診例の利用が少なかった事を物語っていると思われます。

 次に治療に関してであります。がんの早期発見早期手術の重要性が長い間言い継がれてきましたが、現在でもこの方針には変わりないものと思っております。然し今では手術しない治療、放射線療法、免疫療法、化学療法も大分進んできていると聞いておりますが、当院の場合は進行がんの場合は一応外科(市立病院)にお願いして手術の可否を含めて適切な対応をお願いしております。

 また、早期がんの場合には内視鏡的治療を行っている医療機関※1にお願いしております。従って当院では直接がん治療に携わっておりませんが、近年がんの在宅死希望者が多くなっている現状を思う時、往診治療の必要性も痛感しております。しかし、個人医院では体力的な問題もありなかなか難しいと思っております。

NM調査票 NM調査票

むすび

 以上いろいろ述べてきましたが、がん対策として早期発見、早期治療に尽きると思われます。それには先ず正確な診断は云うまでもありませんが、多くの人が検診を受け出来るだけ早く、早期がんで発見されるような社会にならなければと思っております。

 宮城県対がん協会始め各自治体が受診率向上に頑張っておりますが、現実に高齢化社会を迎え今でも検診、受診歴もない進行がんの人に遭遇することがあります。このようなことの無いように吾々開業医が、地域住民に対する検診の重要性の啓蒙と、このすばらしい検診と云うレールに乗れない住民のために少しでも役立つことが出来ることを切に希望する次第です。

                                                                                おわり